トラットリア フォセッタ

TRATTORIA Fossetta

そのシェフ、野菜至上主義につき。 地の利を得て躍動する鎌倉イタリアン

露地栽培の新鮮採れたて野菜を直売する『鎌倉市農協連即売所』、通称「レンバイ」。 西鎌倉『フォセッタ』のシェフ・栃原孝行氏は、鎌倉野菜の知名度が今ほど高くない頃、噂を聞きつけ地元産の野菜を知り、鮮度と安さ、力強く濃厚な味わいに驚いた。

ここ数年は東京から訪れるシェフもずいぶんと増えた。 他のどの料理人にも先んじてより良い野菜を手に入れようと、6時半レンバイ着。 それでも搬入時から、すでに争奪戦はスタートしているという。 目当ての野菜を買い込んでからも、馴染みの生産者に頼まれれば、見知らぬ料理人に"プンタレッラ"の調理法を教えたりもする。 店に帰るバイク後部には、タイヤが沈むほど大量の野菜。 満足いく仕入れの後には、仕込みに大忙しだ。

そんな栃原氏も、かつては青果店で手に入る野菜で料理をしていた。 年間を通してブロッコリーがメニューにあがった時期もあったという。 旬を意識し出したのは、自分の店をオープンしてから。 以来、「野菜がなければ料理は成立しない」と考えるまでになり、メインだろうと、皿上は野菜の"魚添え"的な割合だ。 まかないから出世した鎌倉野菜のピッツァも強烈。 薄焼きの生地を埋めるのは、ピュレにしたり細かくカットしたりもしない、原形が見て取れる野菜。 ピタパンのように包んで頬張ると、ザクザクと歯応えのある食感が脳天を突き抜ける。 しっかりとかみしめるから、野菜の旨みが口中に溢れんばかり。 アンチョビペーストやニンニク、塩、パルミジャーノがアクセントとなり、食欲も俄然勢いづく。

身体が野菜を欲したら、すぐさま都心を立とう。 このショートトリップは、間違いなくクセになる。 いざ、鎌倉！